ビジネス書読書感想文 第5回どこにでもある会社のどこにもない魅力 荒木恭司著

1.この本を読んだきっかけ

 この副題は「地方建設業の成功事例に学ぶ勝ち残り戦略」です。私は佐賀県という地方でコンサル業を営んでおり、これまで「建設業」に関連した仕事をしてきたため、この分野の「成功事例」についての情報を知ることは自然な関心事でした。

2.この本の要約

 この本は、島根県に所在する「電気設備工事会社」の経営者が、公共工事を中心とした大型工事の受注を中心とした業態からBtoCビジネスへの変革を試み、右肩上がりの業績を続けることができた経験をわかりやすく記した書籍です。

3.感想と考察

 業態転換や新分野進出などの事業変革(事業再構築)は、最近でも必要性が叫ばれていますが、実行し、成功させるには非常に困難な経営テーマです。

 私なりにその理由は、①社内で現状への危機感の共有がなされていないこと、②既存の事業の価値観から切れずに新しい価値観を受け入れられないこと、③事業の改革だけではなく、企業文化や風土の改革を行っていないこと、の主に3点と考えます。

 この本では、①と②についても実例が示されていましたが、多くの部分が③に割かれていました。小口工事を建設業ではなく、サービス業として、顧客に「満足」ではなく、「感動」を届けることを事業コンセプトとし、会社理念を「社員第一主義」としたことなど大変参考になる内容です。「社員第一主義」は言葉だけでなく、事業の設定から人事制度計画の導入、社員教育まで一貫して行われていました。

 ちなみに感動」の部分は、「リッツ・カールトン超一流のサービスの教科書」の一部が引用されており、「満足とは心が満たされることを意味しますが、感動は驚きや喜びが心に深く響くことです」と書かれていました。非常にわかりやすい行動、判断基準ですね。

 企業の変革には、アイデア・調査・企画・計画だけでなく、文化や風土の改革も重要であることを痛感しました。事業計画にも魂が必要です。

小島康伸