ビジネス書読書感想文 第7回 小さな豆屋の反逆~田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営 池田光司著

1.この本を読んだきっかけ

 コロナ渦で業績が落ち込んだ事業者への救済と社会構造を変えて行きたいという政府の考え方から「補助金」は大流行である。社会構造変化という観点では、経済安全保養というフレーズで半導体関連の製造業への補助金のニュースを見る機会が増えた。

 私たちの業界では、「補助金」申請のお手伝いをすることが流行している。「補助金」をもらうには、事業計画を作って審査を受け、正しく執行するために報告書をまとめるという作業が必要で、忙しい経営者の支援ニーズが大きいわけである。

 この「補助金」の中で額が飛びぬけているのが、「事業再構築補助金」である。経済産業省では目的を「企業の思い切った事業再構築を支援」となっており、産業構造の変革と企業の改革による活力の取り戻しが狙いだ。

 そこで、この事業の再構築の事例として、いくつかの危機、変化に素早く対応し成長してきた中小企業の事例として本書が目に留まった。

2.この本の要約

 北海道で先代が乾物問屋として創業し、バターピーナッツの製造で発展させた会社を引継いだ筆者。その引継ぎ時点でバターピーナッツは中国製との価格競争に巻き込まれ売上は激減。主力商品バターナッツに変わる新商品としてカシューナッツに目をつけ、3億円の設備を廃棄する等の思い切って経営資源の集中化をはかり危機を乗り切った。

 その後も青函トンネルの開通による本州からのライバル商品の流入OEMからの脱却等の危機を変化に素早く対応し乗り切ったように外部環境の変化に臨機応変に対応した筆者の経験が書かれている。

3.感想と考察

 長年存続している企業はいろんな外部環境の変化に対応しながら経営を続けている。どんな業種であってもこれは間違いない。変化していない会社等絶対にない。

 ただ、中小企業は、人・モノ・カネといったリソースに限りがあるため、他社と勝負するにはリソースを集中しなければならず、変化対応するには既存事業を捨て、新しいことにリソースを振り向けるような思い切った決断が必要になってくる。既存事業を残しながらではリソースが分散してしまう。ここが難しいところであるが、やらねばならないことである。経営は本当に難しい。

 では、何が支えになるかというと、経営に対するビジョンと会社内外の環境を客観的に分析し戦略を導き出せる決断力、従業員の心を一つにする経営力ではないだろうか?

 言い換えると、この3点が常に高レベルにある企業であることが変化へ対応し、永続出来る企業と考える。このことを本書からは学び、確認することができた。

 

小島康伸