ビジネス書読書感想文 第8回 もう価格で闘わない 坂本光司著

1.この本を読んだきっかけ

 企業経営の永遠のテーマである脱価格競争。ブルーオーシャン、差別化、ポジショニング、ブランディング等で学ぶ機会は多く、とかくテクニック的なテーマになりがち。「人を大切にする経営」で有名な坂本先生の著書といことで、本テーマに対して「人」の観点からどのように整理されているか?ということに興味があり、読んでみた。

 

2.この本の要約

 誰かの犠牲・我慢の上にかろうじて成立している値決めは健全・適正とは言えない。おその商品が長く関係者に支持されるとも思えない。価格は、たかが価格ではなく、企業経営の命であり良心である。⇒「三方よし」どころか「五方よし」の価格こそが正しい価格である。

 非価格競争経営を実現するために必要なこと

「五方よし」の経営を追求する
1.企業経営の真の目的・使命を果たす
2.価格は需給のバランスで決定する ⇒中小企業は小ロットや短納期が要求される分野、顧客の顔が見える分野、他社がやれない・やりたくない分野で生きるべき
3.価格競争型経営と段階的に決別する
4.非価格経営を創造する ⇒どこよりも早く価値ある新商品を出す。企業のソフト面の競争力による経営。
5.創造型人財を確保・育成する ⇒人財が豊富な企業の社員1人あたりの年間教育訓練は概ね10万円以上、または総労働時間に占める教育訓練時間は5%程度以上、あるいは売上高の1%程度以上。
6.外部有用経営資源を内部化して経営する ⇒ネットワーク型経営の実行。
7.適正な価格で経営する ⇒高利益率の場合は仕入先や協力企業、顧客への還元も。
8.先進企業に学ぶ ⇒ブランディング」「ニッチ市場」「差別化」「いい会社」を基に価格競争から脱することに成功した24社の実例を掲載

 

3.感想と考察

 本書の「はじめに」の部分に全国の中小企業を対象に「非価格競争に関する実態調査」を行い、その中で「貴社の存立基盤は価格ですか、非価格ですか」という設問を設けた結果、「価格競争企業」が81%、「非価格競争型企業」が19%で、価格が安いことが存立基盤という企業が8割という記載がある。

「価格だけ」で勝負している企業等はほとんどなく、また「価格以外だけ」で勝負している企業もほとんどないのが実態で、「どっちにウェイトがあるか?」という問いであればこんなもんになるのだろう。

 無策経営であれば、社員は難易度が高い「ブランディング」「差別化」等を考えるよりも安易な「価格の差別化」に流れるのは必然で、ウエイトは「価格競争」に傾斜していくことになる。では、どうすれば良いか?その答えは、本書の事例から「人に軸足を置いた経営理念」の浸透、実践と読み取れた。経営理念にこだわる中でブランディング」の道、「ニッチ市場」を築く場所、「差別化」をはかるポイント、「いい会社」の具体的な姿が見えてくる。

 

小島康伸